「白髪、見つけたらつい抜いちゃうんですよね」
40代・50代のお客様から、本当によく聞く言葉です。今日はこの「白髪を抜く」ことについて、美容師として正直にお話しします。
先に結論をお伝えすると、白髪は抜かないほうがいいです。ただ、その理由は「抜くと増えるから」ではありません。ここは多くの方が誤解されているところだと感じています。
まず「白髪を1本抜くと3本に増える」という話。これは事実ではありません。髪の毛は1つの毛穴から生えていて、抜いたからといって毛穴の数が増えることはないからです。増えたように感じるのは、抜いた後も別の場所から白髪が出続けているからで、抜いたこと自体が原因ではありません。
そもそも白髪は、髪に色をつける働きをする細胞のはたらきが弱まることで生えてきます。年齢とともに少しずつその働きが落ちていくため、白髪が出ること自体は自然な変化です。抜いたところで、その細胞が元気を取り戻すわけではありません。
では、なぜ抜いてはいけないのか。本当の理由は、毛穴と頭皮へのダメージにあります。
髪を無理に引き抜くと、毛根とその周りの組織が傷つきます。一度や二度なら回復しますが、同じ場所で何度も繰り返していると、その毛穴から次の髪が生えてこなくなったり、生えてきても細く弱い髪になったりすることがあります。つまり「白髪が増える」のではなく、「髪そのものが減る」方向に進んでしまうということです。ボリュームが気になり始める40代・50代にとって、これが一番避けたい変化ではないでしょうか。
もうひとつ、抜いた直後の毛穴は開いた状態になります。そこに雑菌が入ると炎症の原因になり、かゆみや赤み、ときには小さなできものにつながることもあります。
そして見落とされがちなのが、抜いた髪が生えそろうまでには数か月かかるということです。その間、抜いた場所は文字どおり髪が一本足りない状態になります。分け目や生え際など、もともと地肌が見えやすい場所で繰り返せば、白髪を隠すつもりが、かえって薄く見える原因になってしまいます。
もうひとつ、実際にサロンでよく目にするのが「抜いた場所から、うねった短い白髪が飛び出してくる」という現象です。何度も抜かれた毛穴は形がゆがんでしまうことがあり、そこから生えてくる髪はまっすぐに伸びず、チリチリと波打った状態になることがあります。この短い白髪が一番目立つので、また抜きたくなる。そしてまた同じことが起きる、という悪循環に入ってしまいます。
サロンで実際にあったお話です。分け目のあたりだけ、明らかに髪の密度が低いお客様がいらっしゃいました。伺うと、10年以上その場所の白髪だけを抜き続けていたとのことでした。ご本人は「白髪が気になるから」という気持ちだけで、まさか髪の量に影響しているとは思っていなかったそうです。
では、白髪を見つけたらどうすればいいのか。
・気になるのが1〜2本なら、根元ギリギリでハサミで切る
・本数が増えてきたら、白髪染めやカラートリートメントに切り替える
・分け目や生え際など、目立つ場所だけを部分的に染める方法もある
ハサミで切る場合は、根元から数ミリ残す程度で構いません。ただ、短く切りすぎると切り口がツンと立って、かえって目立つことがあります。少し長めに残して周りの髪に紛れさせるほうが、結果的にきれいに見えることが多いです。
「白髪染めは面倒だし、髪が傷みそうで踏み切れない」という声もよくいただきます。その場合は、シャンプーの後に使うカラートリートメントから始めるのが現実的です。一度でしっかり染まるものではありませんが、週に2〜3回続けるうちに少しずつ色が入り、明るい白髪が目立たなくなっていきます。刺激も比較的おだやかなので、頭皮が敏感な方でも取り入れやすい方法です。
逆に、白髪の量が全体の3割を超えてくると、部分的な対処では追いつかなくなってきます。この段階になったら、サロンでの白髪染めを軸にして、間の期間をカラートリートメントでつなぐ、という組み合わせが一番きれいに保てます。抜くという選択肢は、この頃にはもう現実的ではなくなっているはずです。
白髪が出てくること自体は、止めることができません。ただ、極端な食事制限や慢性的な睡眠不足、力の入りすぎた頭皮マッサージなどは、髪が育つ土台である頭皮の環境を確実に悪くします。白髪そのものを追いかけるより、土台のほうを大事にしていただきたいと思っています。
最後にひとつ。次にサロンに行かれたとき、「実はここ、抜いちゃってるんです」と正直に伝えてみてください。責める美容師はいません。むしろ、その場所の状態を見て、染め方や分け目の位置など、今できる対策を一緒に考えることができます。
抜きたくなる気持ちは、よくわかります。ただ、その一本が5年後10年後の髪の量を少しずつ削っているかもしれない。そう思っていただけたら、今日からハサミに持ち替えていただけるのではないかと思います。
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