「冬より、夏のほうが髪がパサつく気がするんです」
この時期、サロンでいちばんよく聞くお声です。汗ばむ季節で、湿気で髪が広がるのは分かる。でも同時に、指どおりが悪くて毛先がカサカサする。この矛盾に、みなさん首をかしげていらっしゃいます。
原因のかなりの部分は、エアコンです。
先日も、40代のお客様がこうおっしゃっていました。「休みの日は平気なのに、平日だけ夕方になると毛先がバサバサになる」と。お仕事はデスクワークで、席が空調の吹き出し口の真下だそうです。同じ髪、同じケア、違うのは過ごしている場所だけ。それだけで、これほど変わるものなんです。
エアコンは部屋を冷やすとき、必ず空気中の水分も一緒に奪っています。冷たい熱交換器に空気が触れると、水蒸気が水滴に変わって外へ排出される。室外機のホースから水が出ているのは、そのためです。つまり冷房をつけるということは、同時に除湿もしているということなんです。
冷房の効いた部屋の湿度は、40%を下回ることも珍しくありません。これは冬の暖房中の室内と、ほとんど変わらない数字です。「夏だから乾燥とは無縁」というのは、屋外の話でしかないんですね。
髪は、まわりの空気の湿度と釣り合うように水分量を変える性質を持っています。乾いた空気の中にいれば髪から水分が抜け、湿った空気の中にいれば水分を吸い込む。生きた細胞ではないので、自分で水分量を保つことができないんです。
ここに、夏特有のつらさがあります。
朝、蒸し暑い屋外で髪が水分を吸って膨らみ、うねりが出る。会社に着いて冷房の部屋に何時間もいると、今度は一気に水分が抜けてパサつく。夕方また外へ出れば、また吸う。この吸ったり吐いたりを一日に何度も繰り返すことで、髪の表面のキューティクルが少しずつ疲れていきます。
冬の乾燥は「ずっと乾いている」だけですが、夏の乾燥は「乾く・湿るを行ったり来たり」する。だから夏のほうがパサつきを強く感じる方が多いんです。
しかも夏は、エアコンの部屋にいる時間が冬の暖房より長くなりがちです。職場で八時間、車の中で移動、帰宅してまた寝るまで。一日のうち十時間以上、乾いた空気の中にいる方も珍しくありません。屋外の蒸し暑さは数分でも、室内の乾燥は何時間も続く。髪にとってどちらの影響が大きいかは、時間で考えると分かりやすいと思います。
とくに肩から下のロングの方は、毛先が生えてから二年、三年と経っています。その間ずっと同じことを繰り返してきているので、根元は元気なのに毛先だけが極端に乾く、という差が出やすくなります。
頭皮も同じです。汗をかいているから潤っていると思われがちですが、汗と皮脂は別のもの。汗が蒸発するときに肌の水分も一緒に持っていかれるので、冷房の部屋で長く過ごすと頭皮はむしろ乾きます。夏場にフケやかゆみが出る方が意外に多いのは、これが理由です。
では、どうすればいいか。難しいことは必要ありません。
・冷房の風が直接当たる位置に長時間座らない。デスクや寝る場所を少しずらすだけでも違います
・洗い流さないトリートメントを毛先に。夏はオイルよりミルクタイプのほうが、うねりが出にくい方が多いです
・出社前ではなく、冷房の部屋に入ってから一度つけ直す。守りたいのは「乾いた空間にいる間」です
・室内で髪を結ぶなら、きつく結ばずゆるめに。乾いた髪を強く引っぱると、切れ毛の原因になります
・寝室のエアコンは、除湿ではなく冷房で。除湿運転は湿度を下げすぎることがあります
逆に、やらないほうがいいこともあります。
パサつくからと、シャンプーの回数を増やすこと。汗のベタつきが気になるお気持ちは分かるのですが、一日に何度も洗うと必要な皮脂まで落ちて、頭皮の乾燥が進みます。汗を流したいだけなら、お湯だけで流して、シャンプーは一日一回で十分です。
それから、パサつく毛先にオイルを何度も重ね塗りすること。表面がベタついても内側は乾いたままなので、根本的な解決になりません。むしろ夕方の重さの原因になります。
もうひとつ。汗をかいた日にドライヤーを省いて自然乾燥にしてしまうこと。夏は放っておいても乾くので、つい面倒になりますよね。でも濡れた髪は表面が開いたままで、その状態で冷房の風に当たると、内側の水分まで一気に持っていかれます。乾かす手間を惜しんだ分だけ、翌日のまとまりで返ってきてしまうんです。
夏の髪のパサつきは、髪が傷んだせいだと思い込んで落ち込む方が多いのですが、環境によるものが本当に多いんです。秋になって湿度が落ち着くと、自然と扱いやすさが戻る方もいらっしゃいます。
今つらいのは、あなたの髪が弱いからではありません。ちょっと過酷な場所に置かれているだけです。あと少し、優しくしてあげてください。
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