「この夏で一気に白髪が増えました」
8月の終わりから9月にかけて、この言葉を毎年聞きます。先週いらした40代後半のお客様も、鏡を見るのが嫌になったとおっしゃっていました。
結論から申し上げます。気のせいではありません。ただし、白髪そのものがこの夏で急に増えたわけでもありません。目立つ理由が、8月の終わりに3つ重なるだけです。
理由1:夏は髪が伸びるのが速い
髪は気温が上がると伸びる速度が上がります。冬に比べると、夏は1〜2割ほど速いと言われています。
ひと月に1センチ伸びる方なら、夏は1.2センチ。たいした差ではないように思えますが、白髪染めをされている方にとっては話が別です。前回染めてから同じ4週間しか経っていないのに、根元の白い部分は例年より多く出ている。「もうこんなに」と感じる正体は、多くの場合これです。
理由2:分け目が割れて、地肌が見えている
汗と皮脂で根元が寝てしまうと、分け目がぱっくり割れて地肌が見えます。白髪は根元から生えていますから、地肌が見えるほど白い部分がむき出しになる。
もうひとつ、夕方に増えたように感じるのも同じ理由です。朝はふんわりしていた根元が、日中の汗と皮脂でつぶれて地肌が透ける。夏のあいだは、朝と夕方で見え方がまるで違います。ご自分の髪を判断するなら、朝、乾かした直後に見てください。
ご自宅で確認してみてください。分け目を指で1〜2センチずらして、髪をふんわりかぶせる。それだけで見え方がかなり変わるはずです。変わるなら、増えたのではなく目立っていただけです。
理由3:染めた白髪から先に色が抜ける
これは意外に知られていません。白髪は色が入りにくく、そのぶん抜けるのも早いのです。
白髪は黒い髪よりも硬く、染料が深く入りません。ですから紫外線を浴び続けた夏のあいだに、染めた白髪の部分から先に色が抜けて、もとの白さに戻っていきます。黒い髪はまだ色が残っているので、差がいっそう際立って見える。「染めたばかりなのに白い」というご相談は、8月に集中します。
今日からできること
まず、抜かないでください。白髪は抜いても増えませんが、同じ毛穴から何度も抜いていると毛根が傷んで、次に生えてくる毛がうねったり、生えてこなくなったりします。どうしても気になる1本は、根元から5ミリほど残して切ってください。
次に、分け目を定期的に変えること。同じ分け目を何年も続けている方は、そこだけ地肌が焼けて薄く見えやすくなります。左右にずらすだけで、白髪も薄さも目立ちにくくなります。
そして、9月の紫外線をあなどらないこと。8月末の紫外線量は、まだ6月と同じくらいあります。色を長持ちさせたいなら、帽子か日傘を9月いっぱいまで続けてください。
「白髪は予防できますか」について
正直にお答えします。いちど白髪になった毛が、黒に戻ることはありません。色をつくる細胞が働きを止めているので、外から何を塗っても再開はしません。「白髪が減る」とうたうものには、まず疑ってかかってください。
ただし、これから生えてくる毛の進み方は、ある程度変わります。頭皮が硬く血のめぐりが悪い方、睡眠が浅い方、鉄分が足りていない方は、進みが速い傾向があります。40代以降は、無理な食事制限で鉄が不足している方がとても多いです。
頭皮をやわらかく保つことは、その日からできます。洗うときに指の腹で頭皮を動かす。爪は立てない。お湯は38度まで。この3つだけで、ひと月もすると手ざわりが変わってくる方がいらっしゃいます。
染める間隔は、無理に詰めなくて大丈夫
気になるからと2週間おきに染める方がいらっしゃいますが、頭皮への負担が積み重なります。根元だけを染めるリタッチなら、4〜6週間が目安です。それより早く気になるときは、生え際だけを部分的に隠せるものを使って、次回まで乗り切るほうが髪も頭皮も傷みません。
それから、美容師に遠慮なく相談していただきたいことがあります。それは「明るさ」です。白髪染めを暗い色で入れ続けると、伸びてきたときの根元の白さがくっきり出てしまいます。少し明るめにしておくと、境目がぼやけて、次に染めるまでの2週間がずいぶん楽になります。艶が落ちるのが心配な方は、根元だけ暗く、中間から先を明るくという方法もあります。ひとことお伝えいただければ、必ず調整できます。
40代、50代は、女性ホルモンの変化で白髪が進みやすい時期でもあります。ただ、それは何年もかけて少しずつ進むもので、ひと夏で急に増えることはありません。今お困りなのは、そのほとんどが「目立ち方」の問題です。
白髪は、増やさないようにするものではなく、つきあい方を決めるものです。焦って抜いたり、間隔を詰めて染めたりするほど、頭皮と髪は先に傷んでいきます。9月に入って涼しくなれば、伸びる速度も落ち着き、色持ちも夏より良くなります。今がいちばん目立つ時期だと思って、ひと月やり過ごしてみてください。
夏に染めた色が抜けてしまう理由についてはこちらの記事で詳しくお話ししています。あわせて読んでみてください。


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