「似合う」と「好き」が一致しない時どうするか

「本当はこの髪型にしたいけど、似合わないですよね」——カウンセリングでよく聞く言葉です。雑誌やSNSで見た憧れのスタイルと、鏡に映る自分の顔立ちや骨格が一致しない。そのギャップに悩むお客様は、実はとても多いのです。今回は「似合う」と「好き」がぶつかったとき、美容師としてどう向き合っているかをお話しします。

「似合う」を優先しすぎると起きること

美容師として「似合わせ」は大切な仕事です。骨格や顔立ち、髪質に合わせた提案は、確かに失敗の少ない選択です。ただ、似合うことだけを優先して、お客様が本当にやりたかったスタイルを諦めさせてしまうと、仕上がりに満足していても、どこか物足りなさが残ることがあります。

以前、ふんわりとしたくせ毛風のパーマに憧れていたお客様がいました。骨格的にはストレートの方が”似合う”タイプでしたが、何度も「でも、こっちのイメージがずっと好きで」とおっしゃっていたのを覚えています。過去に別のサロンで「その顔立ちだと難しいですね」と断られた経験があるとも話してくださいました。

「好き」を活かす提案という選択肢

そのとき私が提案したのは、全体をパーマにするのではなく、毛先だけに動きを出す部分的なデザインでした。骨格に合わせたベースの形はそのままに、憧れていた”ふんわり感”をポイントで取り入れる。仕上がりを見たお客様は、「似合わないと思っていたイメージが、ちゃんと自分の中にある」と喜んでくださいました。

「似合う」か「好き」かの二択ではなく、両方を少しずつ取り入れるバランスを探ることで、満足度は大きく変わります。全部を叶えようとするのではなく、部分的に取り入れるという発想の転換が、解決の糸口になることは少なくありません。

似合わせだけが正解ではない理由

髪型は毎日鏡で見る、自分自身と向き合う時間そのものです。理論上”似合う”とされるスタイルであっても、本人がその見た目を好きになれなければ、日々のモチベーションにはつながりません。逆に、多少セオリーから外れていても、「好き」だと思える要素があることで、髪を扱う気持ちや自分自身への向き合い方が前向きになることもあります。

実際、「似合う」を優先して仕上げた日は満足そうにされていても、半年後にはまた別のサロンで「やっぱりこういう感じにしたい」と、諦めていたイメージを再び相談される方もいらっしゃいます。それだけ「好き」という気持ちは、簡単には消えないものなのだと感じます。

バランスを取るための3つの工夫

  1. 骨格に合わせたベースの形は変えず、部分的に好きな要素を取り入れる — 全体を変えるのではなく、毛先やレイヤーなど一部分に憧れの要素を反映させる
  2. カラーで”好き”を表現し、カットは”似合う”を優先する — 形は失敗しにくい選択にしつつ、色で個性を出す
  3. 前髪や毛先など、変化を出しやすい部分から挑戦してみる — 大きく変える前に、小さな範囲で試してみることで失敗のリスクを減らせる

迷ったときは、両方を口に出してみる

「似合うと思うけど、本当はこうしたい」——そんな迷いがあるときこそ、遠慮せずに伝えてみてください。美容師は、そのギャップを埋める提案を考えるのが仕事です。似合わせだけに縛られず、「好き」という気持ちも大切にしながら、自分らしいスタイルを一緒に探していけたらと思っています。

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